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東方幻想譚 -3.紫の家へ-

チッチッ、という小鳥の鳴き声で俺は目を覚ました。ずいぶんと目覚めがいい。
霊夢の布団はすでにたたんであり、その上にはメモ書きがあった。

玲斗へ
里へ買い物に行って来ます。朝食は居 間のテーブルに用意してあるので、それを食べて下さい。誰かお客さんが来たら、お茶でも出して神社で待っていてもらうように。
お留守番よろしく。
霊夢

「里か……。」

昨日縁側から見えたあの町のことだろうか。もう少し早く起きていればついていけたかもしれない。興味があったので、少し残念だ。
とりあえず、朝食を取ることにした。ご飯に味噌汁、魚とお新香という典型的な和食である。
頂きまぁす、と箸を取ったそのとき、

「霊夢ー!いるかー?いるよなー?」

誰かが神社の前で騒いでいる。

「客が来たらお茶でも出してーーだもんな。」

玄関へ向かうと、そこには一人の魔女ーーいや、魔法少女がいた。白と黒のエプロンみたいな服に箒を手に持ち、いかにも魔女です、というようなとんがり帽子をかぶっている。その先は律儀にもちょこんと折れ曲がっていた。

「おお、やっぱりいたか……!?え?えええっ!?」

その少女は金色に輝く瞳を大きく開いて戸惑っている。そう驚くことでもないと思うが。

「れ、霊夢にお、男がいたのか……!?」

「いや別にそういうわけじゃ……。」

「こりゃあ大ニュースだ!ブン屋に話してこなきゃな。きっと大騒ぎになるぞ。」

少女は箒にまたがると、砂煙を残してものすごい速さで飛んでいった。

「うーん、なんか変な誤解をされたなぁ。」

幻想郷において、家に男性がいることは珍しいことのようだ。確かに、まだここでは男を見たことがない。

「それにしても、妖怪だったり魔法少女だったり、忙しいところだ。そのうち妖精だの吸血鬼だのが現れてもおかしくないな。」

つぶやきながら食卓へ戻る。箸を取り、少し冷えかけた朝食を口にした。幻想郷のご飯は、元の世界と変わらぬ味である。これは二つの世界につながりがあることの証明なのだろうか……。
朝食を食べ終わる。何するでもなく縁側へ向かい、腰掛ける。妙に落ち着くこの場所が、ちょっとしたお気に入りだった。
心地よく差す夏の朝の日を浴びながら、俺は一人考える。幻想郷ーーそれは本当に存在するものなのだろうか。ただ彼女らが面白がってからかっているに過ぎないのではないか。
しかし、その幻想は霊夢の笑顔によって打ち消される。人がーー仮にも彼女が人間であるならーーあの表情で騙すなんて出来っこない。見知らぬ俺をルーミアから助け、食事や睡眠場所も与えてくれた彼女は、その心の奥底で何を思って俺を助けるのだろう?

「ただいまー。」

霊夢が帰って来たようだ。

「なあ、なぜあんたは俺を助けるんだ?なにも利益などないだろう?」

思ったことが口から零れ出る。素直にお礼が言えない代わりの言葉だった。

「さあ、なんででしょうね。自分でも分からないわ。でもなんだか助けなきゃいけないような気がしたのよ。」

「紫のところへ行けば分かるかな?」

「そうかもね。」

霊夢は両手に持ったカゴを置いて言った。

「お望みなら今すぐにでも行けるけど?」

「じゃあよろしく頼む。」

神社から出ると、強い夏の陽光が照りつけた。さっきまでは気持ち良かったというのに。

「じゃ、ついて来て。」

おもむろに霊夢はフワリと浮き、上空へ上がって行った。俺はその様子をただ見上げることしか出来ない。

「おーい、早くおいでよ!」

「……俺は飛べないんだが。」

ため息混じりに言う。まったくこの幻想郷という場所は、手からわけの分からない物体を飛ばしたり、空を自由に飛んだりと、ことごとく物理法則を無視している。

「あ、そうだったわね。仕方ないわ、歩いて行くわよ。」

「自転車とか車とかないのか?」

「?なにそれ?」

自転車を知らない……まあ、自由に空を飛ぶ彼女らに自転車など必要ないだろうから、当然とも言える。ここでは常識などほとんど通用しないのだ。

「いや……なんでもない。」

森の中を霊夢についていく。聞こえるのは蝉の声ばかりで、人気がなかった。

「そういえば、あなた弾幕を張れるのよね。」

「あの玉のことか?」

「そう。幻想郷では、大抵の諍いは『弾幕ごっこ』で解決するの。ごっこ、って言っても怪我もするし、最悪死ぬかもしれないわ。
だから、死なないために最低限の知識をあなたにはつけてもらう。」

「って、俺は別に幻想郷に永住するなんて言ってないぞ。」

「言ったでしょ?あなたは連れて来られたんだから、そう簡単には帰れるとは限らないわ。」

「……。」

なにも言い返すことはなかった。

「さて、まずはあなたの実力を見させてもらうわね。」

「え……いや、俺、ルーミアと闘ったのが初めてだったから、どうしたらいいかなんて分からないぞ?」

「いいのいいの、適当にやってくれればいいから。」

怪我もするし、死ぬかもしれないなんて言ったくせに、適当にやれとはなんだ。

「あ、ちょうどいいのがいた!」

霊夢の指差す先には、一匹の妖精がいた。空色の大きなリボンをつけている。

「チルノよ。バカだからあなたでも勝てると思うわ。」

「いや、でも……。」

「チルノー!バーカバーカ!」

チルノがくるりと振り返ってこちらへ飛んでくる。

「じゃ、頑張れ~。」

霊夢はフワリと上空へ上がって行った。仕方ない、もうやるしかない。

「バカなんて言ったのは誰?ん、あんたね?」

チルノが俺を睨む。明らかに声で霊夢と分かるだろう……本当にバカのようだ。

「あんたなんか凍らせて、木っ端微塵にしてやる!」

まったく、なんでこんな羽目に……。
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Author:疾風ロケット
疾風ロケットです!
このブログでは、東方の二次小説を書いていきたいと思ってます。まったりと書いていくのでよろしくです。
今は東方永夜抄のスペルカード集めをやっています。(ラストワードムズい・・・)
こんなダラダラ学生のブログですが、ちょくちょく小説を読みにきていただけると嬉しいです。あ、読んだらコメントくださいね?

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好きな東方キャラは諏訪子と咲夜さんです。

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