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東方幻想譚TIPS -記憶ノ欠片-

少年は夜の街を歩いていた。毎日の日課である。
その日は曇り気味で、月は雲で隠れていた。
雨が降るわけでもなく、晴れるのでもないそんな天気が、少年は嫌いだ。

人気のない街。その静寂を求めて少年は歩く。
そして気づいていた。
「やつら」が後ろからつけていることに。

「やつら」は夜の静寂を壊す。少年くらいの歳をターゲットに、金を絞り取っていく。
ふっと少年は路地へ入っていった。おそらく「やつら」はしめたとばかりについてくるだろう。
「やつら」が静寂を壊すならーー
少年が「やつら」を壊してしまえばいい。

やはり「やつら」はついてきた。
少年は彼らを哀れむ。自分を狙えばもう、こんなことはできなくなってしまうから。
そして、後ろから襲いかかってきた。

少年に奇襲をかけるなんて、無駄極まりない。
彼には全てが見えている。

相手は三人。武器はバット、鉄棒、スタンガン。少年一人襲うのに随分な装備だ。腕に自信がないのだろう。
もちろん少年だって特別力があるわけではない。しかし少年にはそれが要らない。
彼には全てが見えている。

一人がバットを振り下ろす。が、
バットは初速よりも遅くなっていく。
やがて、その動きは完全に止まった。
ここからは、少年だけの世界だ。

世界の動きが遅くなっていくのに反し、彼の思考は速く速く、そして鋭敏になっていく。彼から感情が削ぎ落とされ、代わりに何かが残される。

音もなく、目の前の止まった風景が再生される。
バットは少年の肩口に当たり、嫌な方向へねじ曲がる。
倒れた少年を、「やつら」は嘲笑いながら蹴り飛ばし、彼の懐を探る。
何もないと分かると、悔しそうな顔をして少年の顔を踏みつけ、路地から去って行った。

失敗だ。

おもむろに映像が巻き戻され、「やつら」の一人がバットを振り下ろすところで停止。
しばらくすると、また音もなく再生が始まる。

再生、巻き戻し、停止。そのループが何十回、何百回と飽きるほど繰り返され、やがてその中から少年は一つを選択した。
ーー最も適切で、彼が満足する未来を。

最後の巻き戻しが終わると、世界に音が戻った。
振り下ろしたバットの先に少年の姿はない。
感情を捨てた彼に慈悲など欠片もなく、どこからか取り出したナイフで男の腿を掻き切った。
鮮血が噴き出し、男をみるみるうちに染める。薔薇よりもうつくしく、鮮やかな色に。

瞬時に大怪我を負った人間は大量のアドレナリンが分泌される。それが全身に行き渡り、怒りに変わるまで、十数秒。

その間に、恐怖で凍りついた二人の方へ走る。
それに気付いた二人は、怯え顔で構え、鉄棒を振り下ろし、スタンガンをスパークさせる。

鉄棒は恐らく少年の頭を狙うだろう。スタンガンはきっと低出力。彼らがそこまで考えて武器を買うはずがない。
一瞬の判断で鉄棒を持った男を避ける。そのとき、もう一人が少年の背中にスタンガンを押し付け、トリガーを押し込んだ。

恐らく背後の男は勝ち誇ったような顔をしているだろう。
しかし、

「……残念だったな。」

少年はつぶやく。
そして恐らく、いや今度は確実に、
その男は驚きの表情を浮かべているだろう。

革のジャケットを着た少年に、男のスタンガンなど通用しない。「やつら」は武器というものの使い方が分かっていないのだ。

少年は乱暴に男からスタンガンを奪い取ると、またしても鉄棒を振り上げる男に体当たりを食らわせ、倒れた男の意外なほど白くて華奢な首に押し付けた。
ぶるん、と身体を大きく震わせると、男は静かになった。

少年の映像の記憶が正しければ、そろそろアドレナリンを身体中に巡らせたさっきの男がバットを叩きつけてくるはずだった。

ひょい、と左に身体をずらすと、彼の右をバットが通り過ぎていった。
振り向くと、瞳孔の開きかけた男が視界に入る。

振り回すバットを避けると、少年は男の手を切りつける。
勢いづいたバットが路地の暗がりへと飛んでいき、音を立てて転がった。
男がそれに気を取られているうちに、少年は懐から取り出した粉末を男の口へ押し込んだ。

はじめ咳き込んでいた男は、やがて胸を押さえて悶え始め、倒れて動かなくなった。

彼が押し込んだ粉末は、決して危険なものではない。それ単体ならば。
コーヒーの粉末。それの含んだカフェインはアドレナリンの効果を増強させるため、男の心臓に大きな負荷がかかっていた。

彼は死んではいないはず。コーヒー程度のカフェインとアドレナリン量では死に至ることは少ない。

少年は今日を乗り切った、と息を吐いた。狂気をある程度留めた、と。

そのとき、

少年は背後に気配を感じた。

振り返る間もなく、首に冷たい何かが当てられる。

そして、

電撃が走った。

同時に、

彼の中の狂気が目を醒まし、弾けた。
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疾風ロケットです!
このブログでは、東方の二次小説を書いていきたいと思ってます。まったりと書いていくのでよろしくです。
今は東方永夜抄のスペルカード集めをやっています。(ラストワードムズい・・・)
こんなダラダラ学生のブログですが、ちょくちょく小説を読みにきていただけると嬉しいです。あ、読んだらコメントくださいね?

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