FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

東方幻想譚 -7.コウマカン-

カランカラン、というベルの音で俺は目を覚ました。起き上がると、身体に掛けてあったタオルケットがずり落ちる。

「一体ここは……?」

「香霖堂だよ。」

部屋の襖が開き、雪のような白い髪の青年が入ってきた。幻想郷に来てから初めて会う男性だ。

「良かった、生きてたんだね。」

「生きてたんだねって失礼な。」

「君は丸々3日間寝込んでたんだ。僕のところに様々な人が来るとは言え、3日間も寝込む人が来るのは初めてだよ。」

3日間だって……?

「紫も面白い置き土産を置いていったものだよ。見返りは君が払うからって言っていたけど……。」

あいつめ……勝手に俺を幻想郷に連れて来て働かせるつもりなのか。

「そう言えば君の名前は……あ、僕は森近霖之助だよ。みんなは店の名前をとって香霖って呼んでるけどね。」

「神谷玲斗だ。」

「じゃあ玲斗、早速お使いを頼むよ。」

そう言って霖之助は近くの棚をごそごそと漁り出した。
香霖堂の中にはたくさんの棚がある。店、と言っていたが、置いてあるものからは何の店なのか想像がつかない。
スプーンやお皿といった小物から、椅子やテーブル、果ては剣のような物騒な物まで置いてある。

「……おっ、あったあった。これを紅魔館に届けて欲しいんだ。」

霖之助が白く小さなティーカップを寄越して来た。何の装飾もない、シンプルだが小綺麗な代物だ。

「"コウマカン"?」

「あぁ、場所が分からないかな?えっとね……。」

近くにあった新聞を手に取り、載っていた地図に筆で印を付ける。わざわざ筆なんてものを使う霖之助の様子に、つい笑ってしまった。

「どうかしたかい?」

「いや、何で筆なんか使うんだろうって思って。」

「じゃあ、一体何で書くんだい?」

「鉛筆とか、ボールペンとか……」

そう言ってから気付く。
幻想郷に、常識は通用しない。

「いや、何でもないよ。」

「そうかい。じゃあよろしく頼むよ。」

新聞とティーカップの入った箱を俺に渡すと、霖之助は棚を見上げながらメモを取り始めた。




暑い。
まだ朝だというのに太陽が容赦なく照りつけ、ジリジリと身体を焼く。
香霖堂を出たのはいいものの、幻想郷の地理は地図だけではイマイチ理解できない。

「朝だから太陽のある方が東だよな……。」

朝ももう遅いらしく、太陽は既に高く上っていた。それに背を向けて、北西へと歩く。紅魔館は湖の近くにあるらしいから、近くの川に沿って歩けば辿り着くだろう。
鬱蒼とした森に差し掛かる。聞こえるのは川のせせらぎと蝉の声だけ。幻想郷の森は、人気がない。
新聞に目を遣る。そこに書かれた文字は、

"魔法の森"

魔法か……。そういえば魔理沙は魔法使いだったはずだ。ここらへんに住んでいるのだろうか。

「おおっ?玲斗じゃないか。生きてたのか。」

噂をすれば、本人の登場だ。

「文に連れて行かれた後、妖怪にでも食われたんじゃないかと思ってたぜ。」

「文には紫のところまで連れて行ってもらったよ。すごーーーく感謝してる。」

「相当なスピードで連れてかれただろ?よく平気だったな。」

俺が平坦な声で言うと、魔理沙は苦笑した。

「で、玲斗は何をしてるんだ?こんなところで。」

「紅魔館までお使い。霖之助に頼まれたんだ。」

「へぇー香霖がお使いを頼むなんて珍しいな。」

魔理沙は箒を肩に担ぎ、歩き出した。

「ついて来いよ。紅魔館まで案内してやるぜ。」

「ああ、ありがとう。」

魔理沙に幻想郷のことを話してもらいながら、俺も歩き出した。




「ほら、あれが紅魔館だぜ。」

魔理沙の指差す先には大きな洋館があった。
紅魔館には吸血鬼が住んでいるらしい。吸血鬼は姉妹で、妹の方は基本的に部屋に閉じこもっているという。軟禁されているのだ。それなりの理由があるのだろうが、魔理沙が言うにはよっぽど妹の方がマトモらしい。
また、紅魔館にはたくさんのメイドがいるのだが、実質メイド長が一人で家事を行なっているのだとか。あまりにも忙し過ぎて、他のメイドは自分のことでいっぱいいっぱいなのだという。それでは雇っている意味がないような気がするが……。
それ程に忙しい家事を一人でこなすメイド長とは一体どんな人物なのだろうか。
あれこれ考えている内に、門の前に着いた。門番らしき人物が立っている。

「門番に許可は取らないのか?」

「え、ああ、いいんだよ。いつものことだし。」

いつも寝ているのか。これもまた雇っている意味がないような気がする。
筋肉質な身体で長身。頭には「龍」と書かれた帽子をかぶっている。門番にふさわしい体型には見えるが、しかし寝ているのでは……。

「ちょっと図書館に寄らせてもらうぜ。」

この大きさの館だ。さも大きな図書館があるのだろう。魔理沙が借りるのだから、魔術書か何かの類だろうか。
本館のものであろう大きな扉を通り過ぎ、脇道を歩いて行った先にその図書館はあった。
予想通り本棚は数え切れないほど整然と並び、本は無数の仕切りによって分類されている。異国の本が多い。
魔理沙は目当ての本を探しに行ったようだ。俺もいろいろと見てみることにする。
気まぐれに日本語で書かれた本を一冊抜き取る。

『七曜の魔術~魔法陣の構成と曜~』

タイトルからして難しいが、内容もまた難解だった。

「……七曜はさらに効果によっていくつかに分かれる。月の1、土星の3、といった風に数字が付き、魔法陣の形も異なる。例えば火星の2は……」

理解の範疇を越えたその本を閉じる。棚を見上げながら通路を先へと進んで行くと、一つ気になる題名の本を見つけた。

『Macbeth』

文学に疎い俺だが、マクベスという作品は聞き覚えがある。読んだことはないが。
本を開く。そこにはビッシリと英字が詰め込まれていた。
俺の頭にある最大限の英語の知識を使って読んでみた。

「……Life's but a walking shadow, a poor player.」

読めたのはいいが、意味は分からない。パタンと本を閉じたとき、

「……人生はただ歩き回る影法師、哀れな役者である。」

小さく細い声だが、静寂に包まれていた図書館にはその声が響いた。

「マクベス第5幕第5場。」

閉じた本を開き、さっきのページを探す。そこには確かに書かれていた。

「act5, scene5」

ぞっとする。セリフを覚えているのか……?
隣の本を引っ張り出し、適当なページを開き、呟く。

「All the world's a stage,
And all the men and women merely players.」

相変わらず意味は分からない。

「この世界はすべてこれ一つの舞台、人間は男女を問わずすべてこれ役者にすぎぬ。お気に召すまま第2幕第7場。」

ページの下部に目を遣る。

「As You Like It, act2, scene7」

声の主の方へと歩く。
図書館の奥に、椅子に腰掛けた少女がいた。
紫色の髪、紫色の服、三日月の飾りの付いた紫色の帽子。そして、紫色の瞳。鼻にかけた小さな眼鏡を外すと少女は言った。

「私はパチュリー・ノーレッジ。あなたは確か神谷玲斗ね?」

「何故俺の名前を?」

そう問うと、パチュリーは黙って俺の手の新聞を指差した。
新聞を広げる。それは二面にあった。

「久しぶりに外界からの人物!神谷玲斗に迫る!」

あまり記憶がないが、いろいろと取材の成果が書かれている。
変な問答を見つけて落ち込む前に、新聞を丸めた。

「あんたは読んだ本をみんな覚えているのか?」

「有名なものだけよ。まさかあなた外界から来たのにシェイクスピアを知らないの?」

「名前だけしか……。」

「人生は芝居。運命という台本に沿って人間は躍らされているっていうこと。」

「そうなんだ。」

よく分からなかったがとりあえず、適当な相槌打っておく。
そのとき、大きな魔理沙の声が静寂の図書館に響いた。

「パチュリー!本を借りて行くぜ!」

それにパチュリーはピクリと耳を動かし、音を立てて椅子から立ち上がった。その衝撃で周りに積まれた本の山が崩れ、むきゅっ、と変な声を出して彼女は本に埋もれた。

「おい、大丈夫か?」

「全然大丈夫じゃない……私の本は全然大丈夫じゃないわ!!」

パチュリーはむくりと本から顔を出すと、ブツブツと何か呟いた。
すると、何故か本が浮き上がり、元の位置へと勝手に戻っていった。何が起きたのだろうか。

「……私の、本を、返し、なさい!」

そう言って、パチュリーは図書館から飛んで出て行った。爆発音や叫び声がする。

「危ないやつらだ。」

そうとだけ呟き、俺は図書館を後にした。
スポンサーサイト
Comment
Trackback
Trackback URL
Comment Form
管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

疾風ロケット

Author:疾風ロケット
疾風ロケットです!
このブログでは、東方の二次小説を書いていきたいと思ってます。まったりと書いていくのでよろしくです。
今は東方永夜抄のスペルカード集めをやっています。(ラストワードムズい・・・)
こんなダラダラ学生のブログですが、ちょくちょく小説を読みにきていただけると嬉しいです。あ、読んだらコメントくださいね?

リンクフリーです。どんどんリンクしてください!

P.S.
好きな東方キャラは諏訪子と咲夜さんです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。