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東方幻想譚 -8.十六夜咲夜-

図書館から出て、パチュリーと魔理沙がいろいろやりあっているのを横目に紅魔館の本館の扉へと歩く。いかにも重そうな扉を押すと、案外軽く開いた。

「おじゃまします……」

小さく開いた扉の隙間から中に入り、扉を閉めると外界の喧騒は完全に遮断された。
館の中は薄暗い。大きなシャンデリアが天井から下がっているが、使われていなかった。紅魔館の主は吸血鬼だというから、当然と言えば当然なのかもしれない。
薄闇に目が慣れてくると、豪華な内装に気を引かれた。エントランスは赤を基調としているが、決して下品な派手さはなく、落ち着いた雰囲気を醸している。床は薄闇でも分かるほど綺麗に磨かれ、土足のまま入るのが躊躇われる程。敷かれた赤い絨毯は館の奥へと続いており、その先からは明かりが漏れている。それだけが唯一生活を感じさせた。

「お届けものでーす……」

おどけて呟いてみるがその声は響かず、完璧に保たれた静寂が崩れることはない。その完全さが不気味だ。
明かりへと続く絨毯の上をおそるおそる、ゆっくりと歩く。見た目とは相違してその距離は長く、永遠に絨毯が続くのではないかと錯覚させられた。
しばらく歩くと、俺は足を止めた。何か気配を感じる。背後に誰かが立っているような気配。
首をひねって後ろを確かめるが、何もいない。しかし気配は常に俺の背後に張り付いている。
腕を伸ばすが、手はただ空気を掴むだけ。確かにそこに何かがいるはずなのに。
ゾッと肌が粟立つ。
誰が、何のために、何故俺の背後に張り付く?
勝手に館へ入ったからか?
確かに了承も取らずに入ったのは悪かった。でもわざわざこんなに陰険な方法を使う必要があるか?
……吸血鬼の住む館、紅魔館。
人間なら、誰でもよかったのかもしれない。
このまま俺は皮膚を食い破られ、血を吸われ、死ぬのかもしれない。あるいは……

考えすぎだ。

自分にそう言い聞かせる。不気味に流れる館の空気に圧倒されているだけだ。いるのに見えない、触れないなんてありえないじゃないか。

『常識が通用しない。それが幻想郷。』

頭の中で自分でない誰かが言葉を発する。チルノのときの、あの無機質な声。
頭痛がしてきた。忘れよう。忘却は最大の防御。
幻想の声を振り払い、足を一歩前へ繰り出した。
いや、繰り出そうとした。

しかし、

できなかった。

足が絨毯に張りつき、動かない。

怯え?恐怖?

否。

そんな感情的なものではなく、ただ物理的に、足を動かすという至極簡単な動作が出来ない。

そして、それ以外にも異変があった。

今まで流れていた空気はピタリと静止している。

俺の身体だけでなく、世界が諸共固まっていた。

そして、『声』は言った。

『後ろのナイフに気を付けな。』

一体どういう意味なのか考える暇はなかった。突然世界が動き出したのだ。
咄嗟に手に持っていたティーカップの箱を盾にする。強い衝撃があり、俺は絨毯に叩きつけられた。
後ろを振り向くと、メイドが一人立っていた。その手には、一振りのナイフ。
シルバーグレーの髪を小さな三つ編みにし、凛としたその表情は冷たい。鋭く俺を睨むと、彼女は言った。

「あら、防がれるとは思いませんでしたわ。」

感情を殺した声。

「でもあなたには私のナイフから逃げのびることが出来ない。私は30m先にいる、林檎を頭に乗せた妖精の額を貫くことが出来ますので。」

「俺が何か悪いことしたか?ただティーカップを届けに来ただけで……。」

「言い訳は無用。諍いは全て弾幕ごっこで解決です。」

幻想郷の人々は、全くもって勝手だ。

「自己紹介が遅れてしまいましたね。私は十六夜咲夜。ここ紅魔館のメイド長です。以後お見知り置きを。」

咲夜はメイドらしく、スカートをちょっとつまんでお辞儀をした。その間も、表情は固い。

「俺は……」

「神谷玲斗。そうですね?」

有名人なのか、俺は……。

「くだらない雑談はお終い。あなたの口が開くことは、二度とないでしょう!」

咲夜がナイフをホルダーから抜き、切っ先をこちらに向けた。

「スペルカードは2枚まで。」

静かにそう宣言すると、ナイフをこちらへと投げて来た。真っ直ぐに、空気を切るかのように向かってくる。
すかさず横に避ける。背後の床にナイフは刺さり、ふるふると震えた。もし避けていなければーー刺さったナイフと咲夜の手元を結ぶ直線が俺と交わるところ、つまり心臓を貫いていただろう。
振り向けば咲夜が相当量のナイフを手に持ち、こちらへ向けていた。

「避けられるかしら?」

咲夜は奇妙な笑いを浮かべると、なぜか真上にそれらを投げた。しばらくは重力に逆らって上昇を続けたものの、やがて自然法則に負けて落下を始めた……はずだった。しかし、

「おか……しい……。なぜ、こちらに向かって来ているんだ……?」

ナイフの先は本来あるべき方向を向いていなかった。ギラリと殺意のある輝きを見せ、俺に向かっている。
直感で左へ走る。嫌な金属音を立てて、ぐさりぐさりと床に刺さっていく。
一本の外れナイフが頬を掠め、それに今までの弾幕ごっこにないものを感じた。
小さいけれど鋭い痛み。頬を伝う生温かいモノ。
そして、
明らかな殺意。

霊夢の声が蘇る。それ程深く意味を理解していなかった言葉。

『ごっこ、って言っても怪我をするし、』

現実味のない、言葉。

『最悪死ぬかもしれないわ』

今までの俺は、弾幕ごっこをあくまで『ごっこ』としか捉えていなかった。ルーミアからもチルノからもここまで明確な殺意は感じられなかったから。
向こうが本気なら、こちらも本気にならなければ失礼だ。というよりも死んでしまう。

『やるのかい?』

例の声が尋ねてくる。弾幕ごっこのとき、この声は役に立つ。

「ああ」

『了解』

またしても咲夜は大量のナイフを手にしている。あれ程の量を一体どこに持っているのだろう。

『お前は相手が何をしているか分かっているか?』

「いや、全然」

見当もつかない。目の前で何が起こっているのか。

『床を見てみろ』

声に従う。そして、俺は息を呑んだ。

「……ない」

そこにあるはずの……いや、なければおかしいものが。
忽然と姿を消していた。

「なぜ……なぜナイフが消えている!?」

口から出た声は、自分でも驚く程大きなものだった。
それを嘲笑い、咲夜は言う。

「ふふ……消えたのではありませんわ。ほら、」

手に持ったナイフを俺に見せる。

「ここにある」

「そ、それがさっきまで刺さっていたナイフである証拠はない」

「私がそんな量のナイフをどこに持っているというのでしょう?」

俺が思った疑問を咲夜が口にする。
その通りだ。
ならば、咲夜は床のナイフを全て回収したというのか。そんなの不可能だ。俺のすぐ横に彼女が現れた記憶はない。では一体……。

『まだ分からないのか。ヤツは時を止めているんだよ』

時を、止める……?
確かにそれならつじつまが合う。時を止めてしまえばナイフを拾う時間など無限。
しかし……。

『常識が通用しない、それが幻想郷』

認めるしかない。ただ、咲夜が時を止めていることを知ったところで何が出来るというのだ。

『いくら時を止めようと、俺には関係ない。俺の言うことに従っていればいいぞ』

自分の頭の中にいる存在だというのに、理解出来ない。どうやって対抗するというのだろう。
そうこう考えているうちに咲夜はまた投げようとしていた。

「どうすればいい!」

『奴さんが投げてくれないと分からない。生きるか死ぬかはお前がどれだけ速く俺の言葉を理解し、行動に移せるかにかかっている』

なんとシビアな。
しかし、これが弾幕ごっこ。今までとは一味も二味も違う。
咲夜がナイフを放つ。方向はバラバラだ。しかし、まばたきをしたほんの一瞬でこちらに方向転換をする。
徐々に迫ってくるにもかかわらず、指示はない。
まさか、騙されたのだろうか。咲夜の仲間がどこかから囁いていたのかもしれない。
避けようとしたとき、

『動くな』

『声』は短く言った。

切り絵

最近切り絵が中心になってきた…
ssは書けるんですけどね、長編が書けない…

本題は切り絵についてです。
輝夜の次に誰切ろうか思いつかないので、リクエスト取ります。

この記事を見た方、切って欲しいキャラクター名をコメントに書いていって下さい。絵は勝手にこちらで決めさせていただきます。(切りやすい、にくいがあるので)
先着一名です。
が、2コメ以降も後々反映するかもしれないので、どんどんコメしていって下さい。

夏休み明けたらあんまりできなくなるので、今のうちに切っておかないと。

神になりたくないかい?

突然ですが。

なんでも自分の思い通りになる、
神の世界が欲しくありませんか?


なんだかどっかの怪しい宗教みたいな書き方ですが、気にしない気にしない。
で、
なんと

手に入れる方法があるのです。

ホントホント。
当然それに見合うだけの努力は必要ですが。

まあ、手に入れられるなら
どんな努力も惜しみませんよね?


だって欲しいですよね。自分の思い通りの世界。
ゲームし放題、本読み放題、スポーツし放題、学校もテキトーでよし。
果ては気になるあのコにあんなことやこんなことをムフf…うわなにをするやめ、アァッー!

はい。ごめんなさい。もう落ち着きました。
じゃあその方法を…のようにうまくはいかないこの世の中。

代金は25000円(税込み)になります。

と言うほど僕は鬼じゃありません。どうせググれば分かっちゃうし

夢日記というものをつけると、明晰夢と呼ばれるものが見れるようになります。
明晰夢とは、見ている夢を「夢だ」と自覚し、自由自在に操れることを言います。

そう、

自由自在に操れるのです。

夢、つまりは自分の精神世界ですから、なんでもできます。召喚、魔法、飛行、気になるあn…まあ、そんなトコロ。
もちろん自分の精神世界なので、想像できないことは行えません。
そんなデメリットがあるにしても、メリットの方が圧倒的に多いですね。
また、夢をみている間は時間が長く感じられます。つい授業中に寝てしまい、長い夢を見たのにも関わらず思ったほど時間が経っていない。こんな経験のある人もいるのではないでしょうか。
明晰夢も同じです。中には現実の5時間が数週間、数年にも感じられた人もいるようです。

なんだ、簡単じゃん。夢の日記つけるだけでしょ?

そう思ったあなた。是非やってみて下さい。

効果が現れるまで延々と

……それでも魅力的なので、やってみたいですけどね。


こめへん

>>rarapen様

切り絵は時間かかるよ。
楽しいけど。


あ、そうだ。

次の切り絵は輝夜です。規則性皆無。
う~☆→ゆゆ様→てるよ→…?

うりゅうりゅうりゅー(二回目

コウモリが窓に激突してくる音を聞きながら記事を書いている疾風ロケットです、こんばんは。
さて、タイトルで警戒した方もおられるかもしれませんが……
今回は大丈夫です。

では、行きます。




























これだけ引っ張っても見てくれた方。大大感謝です。ただ詐欺には気を付けて下さい。
それでは今回の記事、第二回切り絵の過程晒しを始めます。

まずは新入りの紹介から。

しまむらのみょん服は関係ないw


黒画用紙です。柔らかくて非常に切りやすいです。もちろん100均ですよ。今回はキャンドゥで買いました。8枚入り。お得。

ではでは早速作業過程です。あえてキャラ名は言いません。


最初の二枚はアングルがおかしいです。ごめんなさい。
これは花びらの一部。


花びら中盤。これが一番大変でした。


アングルが正常になりました。
花びら(大)と髪の毛です。紙が硬い分、前回のレミリアよりは楽でした。
紙が硬いんですよ?決して髪が硬くてゴワゴワしているって意味ではないです。


扇子ですね。これも大変でした。
もうここら辺で気付いた方もおられるかと。


服の一部です。割かし楽でしたね。


服完成。


指、顔、首など露出部分完成。


帽子。これが一番楽しかったです。

次で完成です。

じゃぁぁぁぁぁぁーーーーーーん!














ゆゆ様
完成!(ドヤッ

ごめんなさい、口は貼れませんでした…

今回は画用紙が薄かったので、大分楽でした。切ってて楽しかったです。
フリル地獄はありませんでしたが、花びら&扇子が地獄でしたね。
作業時間もぐっと減って、6、7時間程度でした。

さて、次は何を切ろうか……。

コメント返信

山猫A.K.様

是非是非ツンデレ口調頑張って下さい!


それでは、ノシ。

眠い…

今日なんかスカイプのグループ通話を3:00までやってたので非常に眠いです。
しかも喘息ロケットとかいうあだ名も付けられましたw現在253号です。252号は真っ二つに割れてしまいました。
ちなみにロケットの製作者はパチュリーで、喘息が原動力だそうです。
しかもあれですよ。通話部屋の名前はファミリーマートスカイプ店in猥談ですからね。カオスもいいところな内容でした。
また今夜もやるのかな…今度は早く寝ようw

米編

BOTUKO様

>このままだとループするからスルーさせてもらいますwwww

うん、非常に的確で正しい判断です。

ではノシ


業務連絡 to Rubby様

こんなカオスなコミュですよ、雑談は

弾幕ごっこスペシャルルールでもう一度いくぞー

はい、見た瞬間分かりましたね?地雷です。夜桜さんから。口調指定は特になかったので、勝手に決めます。砕けた感じで。
行きますよー

~ルール説明~
・五日以内に回す
・必ず10人に回す
・バトン回ってきたら
「○○さんから回ってきました」と言う
・タイトルは「○○○○スペシャルルールでもう一度いくぞ!」
・バトン回したらバトン回された人にちゃんと報告




1、回す人
☆BOTUKO様
☆どりーむ様
☆Rubby様
☆フリー様
☆rarapen様
☆ぱーぷる様
☆山猫A.K.様
☆家守様
☆UMA様
☆にゃぶや様
ほとんど回って来てると思うが


2.口調指定
 ツンデレ口調な。頑張れ


3.この中で一番最初に会った人
  ブログの中ではどりーむさんかBOTUKOさんかな。
現実ならrarapen、ぱーぷる

4.イメージカラー
  緑と青を足して2で割って3かけて2/3にした色に緑を加えた感じの色。

5.喧嘩した事は?
親との口喧嘩程度。他はまだなし。
怒ると自分でもどうなるかわかんないw

6.バトン回さなかったら
 人生初の怒りを見せる。

7.最近よかったこと
  庭にいたニホントカゲの幼生が可愛かったこと。

8.苦手なものにまつわるエピソード
  ジェットコースターで放心状態になった。

9.明日なにしよーと思ってる?
 精一杯生きる。

10今着てる服は
 スウェット

11.正直今の口調気にいってる?
  いつもより断然楽。

ツンデレ口調がんばって下さ~い

レミリア記念日

カチ、カチ、カチ。
紅魔館のメイド部屋に据えられた柱時計が、時を刻む。そのずれることのない正確な音を刻む時計は、従者である十六夜咲夜にとって絶対の存在だった。
しかし彼女は時にその秩序を崩し、時を止める。行わなければならない家事を済ませるために。他人にその影響はないが、絶対を崩すことに咲夜は小さな罪悪感を覚えていた。
目の前にある時計の長針が真っ直ぐに上を向く。柱時計がボーン、ボーンと二度大きな音を立てた。

「さて、お嬢様のお茶の時間ね」

午前二時。主であるレミリア・スカーレットは吸血鬼であり、日光を嫌う。だから当然の如くお茶の時間は人間と大きくずれてしまうのだ。
厨房に向かい、戸棚からポットを取り出したところで咲夜は気付いた。

「紅茶が、ない……」

もちろん時間を操れる咲夜なら、すぐに買ってくることが出来る。しかし、彼女は一つの約束によって、その能力が縛られていた。

***

それは、咲夜がレミリアの従者になったばかりのとある雨の日のこと。

「咲夜」

「はい」

レミリアの声に咲夜は現れた。

「何か御用でしょうか、お嬢様?」

「……雨ね」

「雨ですね」

部屋が沈黙に包まれる。打ち付ける雨は徐々に強まり、やがて雷も鳴り始めた。
途切れた会話に咲夜は不安を覚える。「雨」で察しなければならないことがあるのかもしれない。それか「飴」と聞き間違えたか、それとも実は「甘ぇゎね」だったのだろうか。ときどきレミリアは話し方が怪しくなる。

「咲夜、ボーッとして、どうしたの?」

「いえ、私に何か不備があったのではないかと思いまして」

レミリアはフッと小さく笑うと、言った。

「あなたに不備などないわ。いつも完璧。完全で、瀟洒なメイドよ。でもね」

意味深な逆接で言葉を切る。咲夜には続く言葉は見当もつかなかった。

「その能力ゆえに、あなたが私から離れて行くような気がしてならないの。」

「私がお嬢様から離れるなど、ありえません。お呼びになればすぐに現れ、ご要望があればすぐに実現させます。」

「時を止めている間、あなたは私から離れている。違う世界へ行ってしまう。いくら私のそばにいたって、時の止まった世界では月と太陽以上に離れているようなもの。あなたが私に手を触れても、私はあなたに触れられないのよ。そんな孤独が耐えられない。
わがままだっていうのは、分かっているわ。それで迷惑をかけるかもしれない。でも。
私はあなたと出会ってしまったから。孤独から一度解放されてしまったから。もう二度と、この幸福を手放したくないの。」

レミリアは咲夜の腰に手を回した。そして、ギュッと抱き締める。

「だから、私と同じ時間を生きて……」

咲夜は驚いていた。鬼の強さと天狗の速さを持つと言われる吸血鬼が、このような弱い一面を見せることに。
しかし、それは当然のことなのかもしれない。500年近く生きたとは言え、レミリアの容姿はまだ幼い。年月など関係なく、心も身体もまだ子供なのだ。

「……お嬢様のお思いの通りに」

レミリアの頭にそっと手を乗せる。
雷は収まっていた。

***

レミリアとの約束。
めったに見せない彼女の弱さを垣間見た咲夜は、それを守り続けて来た。もしかするともう破っても構わないのかもしれない。レミリアだって成長したのだから。
それでも、と咲夜は思う。それでも守る、いや、守りたい。例えその約束が忘れられてしまったものだったとしても、咲夜にとって大切なものであることに変わりはないのだから。
懐から懐中時計を取り出す。約束を交わした日に、レミリアからもらったもの。進み方が早くなったり遅くなったり、なかなか正確な時刻を示さない時計。針の先には月が付いていて、どういう仕組みか日ごと満ち欠けを繰り返す。扱い辛く、またほとんど使わないが、その不安定な時を刻む時計はどこか咲夜に似ていて、愛着があった。

"ルナ・ダイアル"

咲夜はそんな名前を付けた。気まぐれで満月の夜だけに正確な時を刻む、約束の時計に。


本来のお茶の時間から20分程遅れて、レミリアの部屋へ向かった。ドアをノックする。「いいわよ」という短い返事。

「失礼します。お茶の時間です」

「ご苦労様」

なかった紅茶の代わりに緑茶を淹れた。それに合わせてお菓子は羊羹。どちらも霊夢からの貰い物だ。もっとも、レミリアに和菓子は合わないかもしれないため、少し手を加えたが。

「遅れてすみませんでした」

「あら、いつもより遅かったかしら。気付かなかったわ。人間は時間をよく気にするわね」

「私はメイドですからね。人間にも時間に疎い人はいますよ」

神社の巫女とか、という言葉は飲み込む。

「ああ、そうね」

同じことを考えていたのだろう、レミリアは咲夜を見て笑った。

「今日は紅茶を切らしていたので、和菓子です」

お盆を小さな猫足のテーブルに乗せる。初めての和菓子に興味津々のようで、レミリアは羊羹をフォークで突ついたり匂いを嗅いだりしている。
それが済むとようやく小さく切り分けて一欠片を口に入れ、そして言った。

「咲夜」

「はい?」

「これ、似たような物を霊夢のところで食べたことがあるのよ」

初めてではなかったようだ。ではなぜ匂いを嗅いだりしたのだろうか。

「羊羹、よね?」

「はい、そうですが」

レミリアは怪訝な顔をしながら、もう一つ羊羹の欠片を口にした。ゆっくりと咀嚼し飲み込んでから、少し考えるような様子を見せてまた言った。

「これは羊羹よね?」

「はい、その通りです」

「なんだか、羊羹以外の味がするわよ」

咲夜は羊羹にメープルシロップをかけていた。少しでも洋風にしようとしたのだ。

「ええ、メープルシロップを少々。和菓子はお口に合わないかと思いまして、洋風にしてみました」

「私は和菓子、嫌いじゃないわ。まさかあなたはこれが美味しいと思って持って来たんじゃないでしょうね?」

「もちろん、美味しいだろうと思ったからです」

「あくまで『だろう』なのね……。次からは味見をしてから持って来なさい。」

そう言いながらも、レミリアは羊羹をどんどんと口に運んでいった。無理をして食べているのではないかと咲夜は心配になる。

「無理なさらなくてもいいですよ。これは下げて、他のものを持って参りますから」

「いえ、いいわ。出されたものは食べなきゃ」

背中で咲夜から羊羹を守るようにして、レミリアはフォークをせっせと動かす。そんな様子をしばらく見守った後、咲夜は背を向けて部屋から出て行こうとした。

「私はこれで」

「あ、咲夜」

それをレミリアが呼び止める。振り返ると、彼女はフォークを置いて言った。

「今日は何の日か分かる?」

いつになく真剣な表情であるから、言葉遊びではないだろう。
思考を巡らせる。博麗神社の行事はまだないはず。白玉楼の宴会の予定もない。お茶会もここのところは少ない。
一体何の日だか、思い出せなかった。

「……まあ、いいわ」

「済みません、お嬢様……」

「気にしなくていいわよ」

ぎこちなく笑い、頭を下げて部屋を出る。レミリアは気にしなくても良いと言ったが、咲夜は見逃さなかった。
彼女が一瞬顔を曇らせたのを。


自室に戻り、壁に掛けたカレンダーを見る。今日は皐月の十四日、新暦で言えば六月の十五日といったところだろう。霊夢から貰ったカレンダーは旧暦なのだ。
やはり今日という日に何か特別な意味があるとは思えない。強いて言えば明日が満月であること位だ。ルナ・ダイアルがそう示している。
レミリアの言った通り、気にする必要はないのだろうか。しかし、彼女が見せたあの表情が引っかかる。悲しみとも安堵ともつかない、複雑な感情が感じられるものだった。今までに見たことのない、咲夜に理解出来ない表情。
それを見て初めて感じた。いや、初めてだからこそ感じた。

「お嬢様が遠い」

と。そして、分からない苦しさを。
服が乱れるのも構わず、咲夜はベッドに寝転び、目を瞑った。まぶたの裏にもあの表情は焼きつき、決して咲夜から離れようとしない。
今日が何の日なのか。それを言ってくれれば、これほど悩むことはないのに。もどかしさが消え、また素直な笑顔が向けられるというのに。どうして答えを言わず、咲夜を苦しめる?
なぜ、なぜと頭の中を疑問が駆け巡る。

なぜ、答えを言わない?
ナゼ、何ノ日ナノカ分カラナイ?
ナゼ、ワタシヲクルシメル?

問いが咲夜を埋め尽くし、レミリアの姿を見えなくさせる。理解していたはずの彼女が分からない。そばにいた彼女は遠く離れ、手が届かない。
ずんずんと思考が沈む中、一筋の光明が差した。
直接、聞けばいい。
レミリアが遠くて手が届かないのではない。咲夜が手を伸ばしていなかったのだ。そんな簡単なことに、ようやく気付いた。
懐中時計は三時半を指している。夕食を運ぶときに聞こう。そう咲夜は思い、仮眠を取ることにした。
疲れで意識はすぐに遠くなり、眠りへと誘われて行く。しかしその間もまぶたの裏に焼き付いたそれは、消えなかった。


時間とは、無情なもの。
咲夜が仮眠から目覚めると既に空は明るくなりかけていた。あまり眠った気がしない。疲れも残っている。
しかし、そろそろ夕食を作る時間。懐中時計は午前六時を示す。自分がいつになくルナ・ダイアルをよく使っていることに咲夜は気付いた。時計をよく見るのは生活が乱れ始めている証拠だ。規則正しく生活していれば、時計を見なくとも身体が勝手に動く。
起き上がり、服を軽く整えてから部屋を出る。夕食は何を作ろうか。厨房までの長い廊下を歩きながら考える。
窓から差す光は柔らかく、眠気を誘った。フワフワとした意識で夕食を考えても、何も思いつかない。
仕方ない、と考えるのを諦めて廊下に並ぶドアの一つを叩いた。

「入るわよ」

中から返事はない。恐らくまだ眠っているのだろう。
ドアを開け、咲夜の目に飛び込んで来たのはたくさんの装飾だった。
紅魔館の物ではない、小洒落た椅子やテーブル。レースのカーテンには至るところに薔薇の縫い付けがある。白い陶器のティーポットは柄が変わった形になっていて、上品な代物だ。
殺風景な咲夜の部屋とは正反対なメイドの部屋。狭いけれど、どこか充実している。そして、一つ気付いた。

「時計がどこにもないわね」

妖精のメイドがなかなか働かないのはこのせいだろう。自由な時間に起き、自由な時間に食べて、自由な時間に寝る。時計というものによる威圧を一切受けていない生活を送っているのだ。
レミリアも言ったが、人間というのは時間に敏感だ。一日を二十四に分け、それを六十に分け、またさらに六十に分ける。そうして出来た欠片を長いと言ったり短いと言ったりする。
人間以外、つまり妖怪や吸血鬼、妖精たちにとって一日を何万にも区切って、その一つに対してあれこれ言うというのは理解出来ないことなのだろう。滑稽にも見えるのかもしれない。自由に生きればいい一日をわざわざ切り分けて、様々な行為を割り振るなんてことは。
部屋に入り、ベッドに寝転ぶ妖精メイドに声をかける。

「起きなさい」

妖精はまぶたをピクリとさせただけで、起きる様子はなかった。咲夜が彼女の身体を何度も揺り動かし、諦めかけたところでようやく目を覚ました。

「うぅん……おはようございます……!? メイド長!?」

「私は少し体調が悪いわ。お嬢様の夕食を頼みたいのだけど」

「は、はい! わかりました!」

声に少し緊張が現れ、背すじも多少シャンとしたものの、まだ目は眠っているようだ。

「七時に……いや、今すぐ作って運んでくれるかしら。よろしく頼むわよ」

妖精の了承の声を聞き、部屋を後にする。初夏の陽光は少し強くなり、浮いた気分もおさまった。自室に戻り、部屋を見渡す。
簡易ベッド、換えのメイド服が数着入っただけのクローゼット、小さくて古い椅子にテーブル。そして、柱時計。威圧。
人間が自分自身を時計で縛る理由。それは楽だから、と咲夜は思う。
自分の行為を時間で割り振り、その通りに行動するのは楽だ。台本通りに動けば大抵成功するから。何をすればいいかがハッキリと分かっていれば先の見通しが効き、過ごしやすくなる。時間の概念は普遍であるから、他人と予定を合わせることだって出来る。
そうした予定を作り上げ、調和を保つために人間は時計に従うのだ。
では、調和を取るための人間がいない咲夜は、なぜ時計に従うのだろうか。
自分のことだというのに、そんな疑問が残った。


ノックの音。
どうやら眠ってしまったらしい。時計は午後十一時を指している。ずいぶんと長い時間眠ったため、疲れは取れていた。
はい、と返事をする。扉を開けて入ってきたのは、レミリアだった。

「どうしました? お嬢様」

「あなたが体調を崩したと聞いたから、様子を見に来たの。でも元気そうね」

「はい、おかげさまで」

身体を起こす。レミリアはベッドの隅に腰掛けていた。

「まあ、私が治したってわけじゃないけどね」

「お嬢様の元気な姿を見れば、私も元気になります」

「そうかしら」

「はい」

お世辞でもなんでもなく、本音だった。レミリアの笑顔は咲夜にとって元気の源。共に生きて来た主の感情は、自然と従者にも影響するものだ。
だから、あの表情が引っかかったのだ。聞くなら、今。

「あの、お嬢様」

「ねえ、咲夜」

二人の声が重なり合う。お互いに黙り、部屋に沈黙が訪れる。
お互いの視線は交錯することのない、ねじれの位置。レミリアの表情は伺えないが、最も話しやすい状態だ。咲夜は切り出した。

「明日は、何の日なのでしょう?」

見えずとも分かる。レミリアの顔が引き締まったのが。
そして、言った。

「……あなたは何の日だと思った?」

「神社の行事や、宴会の予定かと思いましたが、明日はないはずです」

クスッと小さな笑い声。

「そんなところだろうと思ったわ。あなたのことだから。予定は確かに、ない」

レミリアは壁のカレンダーを指した。いろいろ書き込まれたカレンダーだが、皐月の十五日、つまり明日の日付は空欄だ。

「あらゆる予定が書いてあるあなたのカレンダー。明日の欄に書き込みは当然ないでしょうね。私の言う"明日"はもうめくって切り取られてしまったから」

めくって切り取られた。それが表す意味。

「過去、だ……」

思わず呟いてしまう。今まで気付かなかったから。考えてもいなかった。

「そう、その通り。明日という日は」

とても、とても、大切な日。

「……あなたと私が、出会った日」

目の前の満月が歪む。
かけがえのない、咲夜とレミリアだけの、記念日。
それを、忘れてしまっていた。
なぜだろう。

「あなたの能力は、時の操作。時間を早めたり、遅くしたり、止めることだって出来る。メイドに相応しい素晴らしい能力ね。
でも、決して過去に影響を与えることは出来ない。時は前だけを向いて、一途に前進するから。過ぎてしまったことを変えることは不可能なのよ。あなたの苦しい過去は、消せなかった。
だからあなたは、過去を埋めることにした。未来によって。
消えない。ならば埋める。そんな簡単な行為を、無意識に行なっていたのよ。そうして未来を積み上げるうちに、出会った日の記憶も薄れてしまったのでしょうね」

咲夜自身が気付かなかったことを、レミリアが話す。少し、不思議だ。

「だからあなたが忘れてしまったということは、過去を埋めることが出来た証拠。私にとっても喜ばしいことだった。
でも、どこかさみしいような気がしたのも事実。ついそれが口に出てしまったのが、今日」

レミリアがさみしい思いをしていた。咲夜はそれに気付かなかった。従者だというのに。
それはたぶん、レミリアの前で能力を出来るだけ使わないようにするだけでいいのだと、あの雨の日の言葉を勘違いしていたから。

「『同じ時間を生きて』。お嬢様の言葉を私は誤解していました。能力の使用を慎めばいい、と。
しかしそれは違ったのですね。未来ばかり見つめる私への、メッセージだった」

「そう、人間は未来ばかり見る。予定に沿って生きたがる。私には理解出来ないこと。
まあ、どちらがいいとも言えないけどね。未来を見るか、過去を想うか。どちらが正しいかなんて誰も知らないし、そもそも存在しないかもしれないわ」

どちらを選ぶだろうか。
咲夜は自分に問う。

「私は部屋に戻るわね。そろそろ時間」

柱時計は零時五分前。

「お休み咲夜」

「お休みなさい、お嬢様」

レミリアが部屋を出て行く。ドアを閉める前、ふとこちらを見た。
咲夜が笑いかけると、頬を何かが伝った。

明日まで、あと三分。



咲夜は自室の壁に掛けたそれを手に取った。ずれることなく働き続け、彼女にとって絶対であった柱時計を。
カチ、カチ、カチ。
とぼけた音を立てて時を刻む時計を見ると、長針が短針に追いつくところだった。手元の懐中時計も同じ。

秒針がゆっくりと動く様子を見つめる。あと十秒。

柱時計と懐中時計の秒針は少しずれて進む。同じ時を、違う速さで刻んでゆく。あと五秒。

両者とも自分だけのペースを保ち続けた。どちらが正しいかなど、考えてもいないのだろう。三秒。

いや、そもそも。二秒。

どちらが正しいかなんて。一秒。

「存在しないのかもしれない、か」

ボーン、ボーン、と、とぼけた音が鳴り響く。


……はずだった。

しかし、

咲夜の足元で、彼女の絶対がバラバラに砕けていた。ずっと信じ続けてきた精密機械は想像以上に脆く、ガシャン、とこれもまたとぼけた音を立てて崩れてしまった。

満月の夜の時を刻んだのは、ルナ・ダイアルだけ。

気まぐれでマイペースな懐中時計は、何の感傷もなく平然と一ヶ月に一度の時間を刻み、秒針をゆっくりと進めている。
咲夜はふぅと息を吐いた。
正確な時間が分からなくなったことで、生活が変わるかもしれない。起床や食事の時間がどんどんずれていくかもしれない。妖精達のように。
それでも、いい。
どんなに生活が変わろうとも、絶対に変わらない、大切なものがあるなら。

一ヶ月に一度、正しく時を刻むルナ・ダイアル。

そして。
言うまでもなく、咲夜のそばに、一人。

……輝く紅い満月を背に、大きな翼を拡げて冥い空を浮かびながら手を振る、その一人。

ひらり、と手を振り返す。空に浮く彼女は、飛んで行った。


おもむろに咲夜はインク壺とペンを取り出す。充分にペン先をインクに浸し、カレンダーに印を付ける。そして、書いた。


"皐月の十五日、レミリア記念日"

ブログに復帰

企画用小説が書きあがったので、こちらに戻って来ました。後でこっちにもあげておきます。
小説更新までしばしお待ちを…

疲れた

疲れた疲れたあああああ
最近更新がないのは、とある会合の小説企画に参加してるからです。8/20までに書かないといけないので、そっちでいっぱいいっぱいで…
えっと、それが済んだら…幻想譚の更新と、平成の浦島太郎と、画用紙買ってきたのでまた切り絵をやりたいなぁとおもったり。
ブログの更新は8/20まで基本的にないと思います。気まぐれでするかもしれませんが。
そういうことでよろしくお願いします。

突然ですが

うーんと。
突然ですが。
オフ会をやれやろうということになりました。
主催者は僕、疾風ロケット(中3)とrarapenさん(中3)です。
恐らく神奈川周辺で開催となりまする。
いろいろあって、東方は抜きのオフ会になる予定です。
実現するかかなりあやふやな企画ですが、興味のある方はコメに一報を。
プロフィール

疾風ロケット

Author:疾風ロケット
疾風ロケットです!
このブログでは、東方の二次小説を書いていきたいと思ってます。まったりと書いていくのでよろしくです。
今は東方永夜抄のスペルカード集めをやっています。(ラストワードムズい・・・)
こんなダラダラ学生のブログですが、ちょくちょく小説を読みにきていただけると嬉しいです。あ、読んだらコメントくださいね?

リンクフリーです。どんどんリンクしてください!

P.S.
好きな東方キャラは諏訪子と咲夜さんです。

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